山川町谷軒の地蔵信仰


いっちょ願いのお地蔵さま

[nakaiHP] に戻る

関連する研究
(2-a)[2005年度説話文学会大会 予稿nakai]へ
(2-b)[2005年度説話文学会大会 本稿nakai]へ
説話文学会(6月19日名古屋大学)発表題目:「福岡県山門郡山川町の平家谷」(仲井・東)



谷軒の地蔵信仰
いっちょ願いのお地蔵さま

山川町谷軒のお地蔵さま

いっちょ願いのお地蔵さま


  • (1)いっちょ願いのお地蔵さま
  • (2)道明け地蔵

連絡は、office NAKAIへ


いっちょ願いのお地蔵さま」の名前の由来
一つのことを熱心にお祈りすると,
その願い事を叶えてくださることから名前が付いた。
    日清・日露戦争,さらに第二次世界大戦などで兵士が出征したときには,
    残された家族が武運長久を願いお詣りに来た。

加藤キミ(95歳のおばあちゃん)さんの語るところによれば,
「いっちょ願いのお地蔵様」に関して以下の伝承がある。

2人の男がお地蔵さんの前で大げんかをして,
ひとりの男が連れの男を殺してお地蔵さんの前に埋めた。
 「お地蔵さん,このことは誰にも言わないでください。お願いします。」
と言ってこの場を去った。

数年して,再びそのお地蔵さんの前に男が現れて
 「ああ,俺があの男を喧嘩で殺し,ここに埋めたもんなあ」
とひとりごとを言った。
すると誰もいないと思っていたのに,
お地蔵さんの後ろから男が現れて
「やい,うちの兄さんを殺したのはおまえか。」
と,とびかかって男を殴り倒した。

すると,一部始終を見ていたお地蔵様は,
「わしは何も言わなかったが,自分のことは自分が言い出すとはこのことだ。」
とおっしゃった。

この話は,
・言うなの地蔵
・言いなり地蔵
に分類される昔話である。

【言成り地蔵】の基本的なプロットは以下のとおり。
  (cf.『日本昔話事典』弘文堂)
・馬子や盗人が,お地蔵様の前で旅人を殺す。
・そこに立っていたお地蔵様に,「言うな」と口止めをする。
・何年か後に自らそのことを旅人に話す。
・その旅人は,殺された旅人の子供であったため仇を討たれた。

『日本昔話事典』(真鍋昌弘「言成り地蔵」の項目)では,以下の事例があがっている。
・福井県南条郡鹿蒜村木芽峠
・静岡県小笠郡三浜村(大浜町)
・兵庫加西郡ひよどり峠
・長野県諏訪郡下諏訪町
 (誰でも祈願することは叶えてくれる)
・静岡県三島市二日町小菊堂
 (子供の夜泣きや悪戯を止めさせるように祈るとき,
  初めは土の団子を供えるが
  ご利益が有れば米の団子を供える風習がある)
注目すべきことは
・この系列の話に登場する地蔵が,峠の神的な性格を持っていること
・ときには言成り地蔵が人の願いを叶える性格を持っていること

【言うなの地蔵】の基本的なプロットは以下のとおり。
(cf.『日本昔話事典』(三原幸久「言うなの地蔵」の項目)
・村の男が他村で泥棒をする。
・帰る途中,村はずれの(あるいは峠の)地蔵堂の前で休む。
・半ば冗談で「わしの盗みを告げ口してくれるな」と声をかける。
・地蔵が,「わしは言わないが,おまえこそ言うな」と口をきく。
・驚いた男は,「この地蔵は口をきく」としゃべりまくり,ついに悪事が露見する。
 この話は,東日本よりは西日本に多い。
 九州の話形
  地蔵の前で人を殺し地蔵に見たことを話すなと頼むが,
  殺された子供とともにこの地蔵の前をとおり悪事が露見する。
昔話「言うなの地蔵」は,「地蔵は言わぬがわれ言うな」という諺になっている。
 (cf.三原幸久「地蔵は言わぬがわれ言うな」同書) 

谷軒の「いっちょ願いの地蔵」は,
集落の入り口に立ち,以下の役割を担っていた。
(1)悪霊や疫病を退散させる
(2)願い事を叶えてくれる


「道明け地蔵」名前由来譚 今は昔,このあたりの山々は鬱蒼と大きな木が茂り,昼でも暗い山奥でした。 山には, 「獣道」 「山出し道」(薪集めなどをするときに使う道) 「普通の道」などがあります。 あるとき,旅人が山に迷い込みました。 「山出し道」や「普通の道」などをぐるぐる迷って途方にくれています。 この旅人は,日頃から信心しているお地蔵様の祈りのことば 「オンカカカビ,サンマエイソワカ」 を唱えつつ,一心にお地蔵さまに祈り続けていると, 空より一条の光が射し込み旅人の足もとを照らして動き出しました。 旅人がその後をついていくと,目指す里に着くことができました。 谷軒の者たちは, 草が何度も踏まれていたり小枝が折られたりしていたため, 旅人が迷い込んだことを知っていました。 しかし, 旅人の迷ったあたりの「普通の道」の真ん中あたりに 「いっちょ願いのお地蔵様」が立っていたため, 心配はしませんでした。 事実,旅人はお地蔵様に導かれて 無事に里に下りることができたのでありました。 この時より, このお地蔵様のことを, 迷ったときの道明け地蔵様と呼ぶようになりました。 山にはいると, 昼は太陽, 夜は月や北極星(北斗七星) 風の感じ 生えている木や草 などによって方角た位置を確認することになります。 お日様に導かれたという伝承は,まさに山の民の感性と言えるでしょう。 しかし, なぜ一心に祈ったから願いが叶ったということでは, 「いっちょ願い」のお地蔵さまと同じです。 2つの守り神 谷軒デーラ  入り口を守る「いっちょ願いのお地蔵さま」  集落を見下ろす丘の上に祀られている地蔵尊  「いっちょ願いのお地蔵さま」は,お牧山に至る殿様の道の脇に立つ。 平(瀬高町平デーラ  入り口を守る地蔵尊  集落を見下ろす丘脳に祀られた現人神  お地蔵さまは,   清水寺から赤星兄妹の悲劇の川原を経て,   平,さらに吉野釈迦堂・三池に至る巡礼の道の脇に立つ。 平家の里として知られる両者の地理的条件は,共通している部分も多い。

TOP [nakaiHP] に戻る ©2005 office NAKAI.All Rights Reserved.